廃墟の歩き方執筆者の栗原亨さんは意外にもといっては何だが、朗らかな雰囲気の人 で 「コンクリの耐久年数が限界にきていて、目の前に塊が落ちてきましたー、真下にい たら即死でしたねー(笑)」 など、ニコニコしながら廃墟に潜入した話を聞かせてくれた。 行く前は『廃墟は遺跡のようなものだ』と思っていたけれど、長い歴史からしたら 廃墟には人に捨てられた直後の生々しさがある。古代の遺跡のように、人が過去に思 いを馳せるのを受け入れてくれる優しさは感じられない。錆びていくつか段のなく なっている階段や、2階の床が抜けて一階が見えている寮らしき建物、なにもかもが 錆びついてぼろぼろで腐食していて、土ぼこりとかびの匂いを落とすには家に帰って から4回も体を洗わなければならなかった。 廃墟年齢は推定10年程度だそうだが、屋根が破れたり階段が欠損したり、2階から 1階への床が腐って抜け落ちたりしている。本当にたった10年の間にこんなになって しまうものなのか?捨てられた時点で、最低限の片付けくらいされているものではな いのか?机の引出しは開き放題で事務室の灰皿には吸殻がそのままでタオルや軍手も 床におち、ぶちまけられたダンボール壊れて放置された椅子など、どうしてここまで 散らかっているのだろう。まるで空襲かなにかで逃げた後かのようだった。誰かが少 しずつ荒らしているのだろうか? ただ、床の抜けた木造の寮らしき建物に関しては、コーラやファンタの古めかしい瓶 と1974年のカレンダーがあったので30年ちかく経過している可能性がある。各所にあ るなかで一番新しいカレンダーは2000年のものだった。無論これも埃だらけだ。2年 前、誰かが来て住んでいたのだろうか。方々に捨てられている空き缶はそれほど古く ない。 いい写真をとろうと思ったのも此処へ来た理由の一つだったが、ありのままでそこ に存在するだけで、作られた空間ではない本物の廃墟だったので難しい。あたりをみ まわしながら歩いていると、寮の床に、BB弾が大量に落ちているのを発見。これは一 体?妙に新しいぞ…いろいろ推理をめぐらせていたら、真相が発覚。廃墟 Explorerの方々が時々許可をえて敷地に入ってはサバイバルゲームをしていたそうなのだ い。そんなことしてたから床がぬけたのでは…? 私は歴史に思いをめぐらせるほうなのだが、そのような楽しみ方を聞いてからはま た違った目で見ることができた。